土器と土偶とレキシとギャル 縄文にハマる、夏

▼皆様、この夏はパンダもいいけど土器、土偶です。

東京・上野の東京国立博物館で、特別展『縄文―1万年の美の鼓動』(~9月2日)が始まった。縄文の国宝6点が史上初めて一堂に集うほか、全国から縄文時代の品々が集まるとくれば、会いに行かない手はない。かつて教科書であっさりやり過ごしてしまった縄文、岡本太郎を虜にした縄文。東博に足を踏み入れると、沸々としてくる、どうにもエナジェティックになってしまう。

▼燃えさかる炎のごとき火焔型土器を、ひな壇状にこれでもかと並べた空間といったら、激辛麻婆豆腐に負けない夏向きぶり。こっちまでメラメラしてきて顔が猪木になる。火焔型に似た焼町土器なんか、雲母って鉱物が混ざっていてキラキラ。土偶『縄文の女神』(国宝)を斜め後ろから見たならば、くびれた腰と突き出たヒップ、ベルボトムみたいな下半身へのフォルムに見とれて、「やべぇ」「パねぇ」しか言えない夏のバカになっちまう。合掌土偶(国宝)は体育座りで「時間よ止まれ」と祈るおちょぼ口のウルトラマンだ。ハート形土偶(重要文化財)のキュート&ユーモラスといったら何だ、連れて帰りたい。最もフェイマスなあいつ、「ゴーグルさん」と呼びたい遮光器土偶(重文)は威風堂々、誇り高き門番のごとくおわすのだが、片脚専用スノーボードを献上したくもなる。周りで小学生女子が「あっゴーグルいた!」と目を輝かせ、別の男子は親に買ってもらった分厚い特別展写真図録を食い入るように見ていて、こちとらちょいと焦る。音声ガイド機(貸出料520円)から流れる女優杏の声に耳を傾け、平静を装う。

▼特別展に来る前、映画『縄文にハマる人々 世界で最も美しい謎』(7月7日から全国順次公開中)を見た。山岡信貴監督が5年をかけて各地の遺跡や博物館、研究者、デザイナー、土器を作っている人まで取材に駆け回り、ナレーションにはコムアイ(水曜日のカンパネラ)を起用、少しライトに見やすくまとめたドキュメンタリーだ。いろんな人がタテヨコ正面斜めから、縄文ってやつを語る中、いとうせいこうの言葉が良かった。

「(縄文は)ギャル度が普通じゃない」

 火焔型のメラメラ、焼町のキラキラをはじめとするデコレーションされた縄文の品々。このデコるセンスが、次の弥生時代になると消えうせて、素っ気ない。

▼筆者はこれまで、デコられまくったスマホを目にすると、ちょいとばかし引いていた。裏全面が小粒のキラキラストーンで埋め尽くされていたり、天使の羽がついていたり。だが、東博で縄文を生鑑賞後は「デコスマホ、いいじゃないの」とあっけなくポジティブになった。

世は空前の縄文ブームだとか。機能や洗練より野性へ向いているのか。映画の中でデザイナーの佐藤卓は「モダンデザインはこのままでいいのか」と語っている。登美丘高校ダンス部のバブリーダンスが一世を風靡したのも、バブルネタ芸人平野ノラの活躍も、どこかでつながっているのだろうか。モダン建築は無味乾燥だからと、1980年代あたりに出てきたポストモダン建築は、「バブル建築」と同意語のようになったものだが、当時批判を浴びた隈研吾の『M2ビル』を今見たら、「いいじゃないの、M2ビル」と感じるのだろうか。

▼いとうせいこうは、縄文ブームより遥か前、2011年に『狩りから稲作へ』を作詞していた。池田貴史の歴史縛りファンクネスバンド「レキシ」の一曲だ。いとうはレキシネーム「足軽先生」でラッパーとしても参加している。歌を手短に説明しよう。

狩猟・採集生活のロマンを愛する男。だが、危険と隣り合わせの日々を案じてか、貴方とずっとここにいたいと願う女のため、男は涙をぬぐい、安全な稲作中心の定住生活へと舵を切らんとす。そのケジメと哀切が、「♪縄文土器 弥生土器 どっちが好き? どっちもドキ」のリフレインに挟まれ、歌われているのだ。

▼一方の池田貴史は15年、秦基博(レキシネーム「旗本ひろし」)と共に「あおもり縄文大使」に任命された。2人が共演したレキシの曲『年貢for you』は夏にヘビロテしたいラブリーチューンだというのは大事な余談だが、大使就任式で、池田は縄文時代についてこう語ったという。

「誰も土地を持っていなかったから、平和だったというイメージがありますよね」

縄文は1万3000年前から約1万年も続いた平和な時代といわれる。人類がクリアできずにいる大問題「この土地は誰のものか」とは本当に無縁だったとしたら、うらやましい。ああやっぱり「M2ビル」に対して以前よりポジティブになる感じはしない。ビルは景観を支配するし、不動産だし。

ただ、現代人の「平和」の見立てや憧憬をよそに、縄文人は「♪縄文時代が夢なんて あとからほのぼの思うもの」と歌うかもしれないし、「♪縄文時代の真ん中は 胸にとげさすことばかり」かもしれない。森田公一とトップギャランは今も正しい。

▼映画『縄文にハマる人々』には、「私たちがいなくなっても、いつか誰かが思い出してくれるかなぁ」という視点が含まれている。数千年後の人々に、今の暮らしはどう映るのか。面白そうに映るだろうか。未来に大量に出土すると面白い物は、デコられたスマホの数々かもしれない。未来人たちは、われわれの今を何時代と名付けるだろうか。(敬称略)

(宮崎晃の『瀕死に効くエンタメ』第113回=共同通信記者)

☆国宝のうち『仮面の女神』と『縄文のビーナス』は7月31日から展示。

2018年7月12日

エンタメ記者コラム

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