『噛みあわない会話と、ある過去について』辻村深月著 苦い遊びみたいな感じ

 もやもやした気持ちを持て余しながらふらふらと徘徊する夜、表紙のきれいな本を買った。そのままコーヒー屋に移動し表紙を開く。(1時間経過)あっ閉店時間ですか、そうですか。家までの電車、疲れたときは奮発して特急とか乗っちゃうその帰路を、敢えての鈍行。帰宅しても続行。そして読了(ラッパー)。

 こちら、直木賞とったと思ったら今度は本屋大賞、書店で見ない日はない売れっ子作家、辻村深月の最新作です。かわいいよね表紙。でも全然かわいくねえの内容。もっとポップな感じかと思ってたのに、うそつき~。

 男を感じさせない男友達が連れてきた、なんだかズレてる婚約者。パッとしない少年だったのに、今や国民的アイドルグループの一員となった元教え子。かつてはダサくて痛くて浮いていたが、経営者として成功した「カリスマ」として華々しく活躍するクラスメイト……。

 それらはどれも、「過去」にまつわる物語だ。過去にしたことされたこと、つけられた傷と無邪気につけてしまった傷。悲しみとも恨みとも違う、屈辱や軽蔑、いたたまれなさや恥ずかしさ、そして衝動的な怒りが、うっすらと、でもはっきりと根底に流れる短編集だ。

 ほんとうのことを言うと、帰ってその日に読了はしていない。ただの語呂合わせで言ってしまいました(このドラマはフィクションです)。ほんとうは、最後20ページちょっとを残して本を閉じたのだ。終わるのが惜しいような、直視するのがしんどいような(もやもや増幅)、そのどちらでもあったのかもしれないけど、とにかく閉じた。一旦寝かせた。そしてしばしの後にまた開いたのだ。うわー、やっぱりなんだか目が離せない。それは、真っ赤な血を流していた傷口をじっと眺めて、治りかけのかさぶたを剥がしてまた鮮血を見るような、痛くて悪趣味な、苦々しい遊びみたいな感じ。

(講談社 1500円+税)=アリー・マントワネット

2018年7月13日

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